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終葉

いろいろな町や村を訪ねます。目的を聞かれても、答えられない小さな旅。いろいろな人と会えることも嬉しいですし、珍しいものを見ることも楽しい。ただ、どこに行っても、私は何かを探しているのかもしれない。光と陰が交差する光景。日本の山や町で出会う、はっとする一瞬。目に見えるもの、理屈で説明できるものではなくて、ただ感じられる「何か」を見つけようとしている。昔からたくさんの人たちが、感じ、恐れ、敬ってきた何かを、私も感じていたいのです。道が結界を崩し、様々なものたちの往来を招き、人はどんどん変わってゆく。「モノ」は日ごとに進歩し、人を変える。「誓う」とか「信じる」という言葉が、だんだん使われなくなって、「証拠」が大切な暮らしになってきている気がします。私の探しているものは、きっとそんな「モノ」と対極にあるのでしょう。決して名付けることのできない、「何か」。私のファインダーはそこに向いています。

この村の家々に掲げられた鬼の面。今でも、この村に鬼はいるのでしょうか。昔話のように、鬼がいなくなった村は、いつまでも幸せに暮らしてゆけるのでしょうか。軒下の鬼の顔が悲しげに見えた時、私には挽歌が聞こえたような気がしました。